感じるからだ
YCAMインターラボ2009年度研究まとめレポート
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感覚器官から観た芸術
現在、詩や文学を除いた、芸術として語られるもののほとんどは、視覚芸術、聴覚芸術が大半です。これは、音楽の様に一度に沢山の鑑賞者を可能にしたり、絵画の様に数年にわたって同じ表現を鑑賞できたりと、再現性や保存性の問題も、鑑賞者の受容量が多いことが他の芸術とは大きく異なり、視覚/聴覚芸術は近代に特化した芸術とも言えるでしょう。しかし、私達の身体には一般的に言われる五感があり、視/聴覚以外の嗅/味/触覚、それ以外にも体の重心移動などの全身で感じる体性感覚などがあります。
これらの感覚は日常生活の中ではなくてはならない感覚です。文化全体では、食文化やスポーツなど嗅/味/触覚/体性感覚といった感覚に焦点を当て、それぞれに探求が進められています。
今回の研究では感覚器という視点から、芸術がどのように可能か探ってみたいと思います。
また、詩や文学を中心に時間を追った物語構造は複雑な表現が可能ですが、これら表象的、文法的な表現は、一度棚に上げて感覚器による表現に限定して考えたいと思います。
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- 感覚は生物の出発点
- 特殊感覚と一般感覚
- 物理的刺激と化学刺激
- 器官の順応と脳の順応
感覚の種類
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- 細胞の膜電位
- 刺激を伝える伝達手順
刺激を伝える仕組み
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- 胎生初期の器官の形成
- 嗅覚と味蕾
- 皮膚の形成
- 網膜と内耳膜の形成
- 動物のインターフェイスレイアウト
感覚器はどのように生まれるのか?
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脳で感じる
- 物質が心を変える
- 心の働き
- 脳を構成する分子
- 脳内物質の処方
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まとめ
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感覚の種類
感覚は生物の出発点
感覚の出発点は、原始的な単細胞生物から考えてみます。自然や外敵といった環境で生き抜くために、身の回りで何が起きているかを知る必要が有りました。さまざまな外来刺激を受けると反応を外界に返し、状況の様子を観察るという過程を繰り返すことが生物の基本機能です。
次に多細胞生物となると、刺激をとらえる感覚受容細胞と反応伝達する筋細胞などの分業が進み、感覚受容細胞の一部がさらに神経細胞(ニューロン)へ発達します。さらに進化ととげ、記憶や判断を行うために神経が束となって脳が生まれ、その脳周辺に特殊感覚(嗅覚/視覚/聴覚/平衡感覚/味覚)の検出器官が集められ頭と顔が形成されます。
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特殊感覚と一般感覚
特殊感覚は以下の5つです。
- 嗅粘膜による嗅覚、
- 眼球内網膜による視覚、
- 内耳コルチ器官による聴覚、
- 口腔粘膜による味覚、
- 内耳三半規管と前庭による平衡感覚、
5つ目の三半規管は普段意識されませんが、独立した特殊感覚器官です。一般的に五感というと視覚/聴覚/味覚/嗅覚/触感ですが、この考え方の期限はアリストテレス(Aristoteles,384-322BC)にあり、当時は皮膚と考えていましたが、19世紀後半から「触覚Tastsinn」という概念が定義され、皮膚だけでなく筋などの深部組織、内蔵、三半規管などにおこる感覚が含まれます。この5番面の感覚を一般感覚と呼ばれ、現在ではさらに分化され、主に以下の5つです。
- 痛み、
- 圧感、
- 固有感覚(筋肉の運動を通じて重心移動などを感じる感覚。おもに骨格と筋肉の緊張から無意識のうちに感じるもの。)
- 冷温感覚、血液成分の感覚(血液成分の異常が刺激となって生じ、空腹感など。)
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物理的刺激と化学刺激
生体に外界からの刺激が加わると、その刺激のそれぞれ特異な感覚受容細胞が興奮して神経線維に電気信号(神経インパルス)を送り、それが脳へと送られる事で感覚として感じます。
外界からの刺激は物理的刺激と科学刺激との大別されます。
物理刺激には、皮膚の圧や温度(熱的刺激)それと痛覚(侵害刺激)。筋/内蔵の伸張感覚。平衡感覚に影響する加速度。聴覚を引き起こす音波(機械的刺激)。視覚が光を感じる電磁刺激などがあります。
化学的刺激は、化学物質によって引き起こされる感覚。味覚は水溶物質、嗅覚は揮発性物質の刺激。血液成分の異常が刺激となって生じる感覚(空腹感など)もあります。
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器官の順応と脳の順応
物理的刺激も科学刺激も、刺激の強さが一定値よりも弱い場合興奮は起こらないので感覚は生じません。また、同じ量の刺激を与え続けると感覚の強さ(インパルス頻度)はしだいに低下し、これを順応とよびます。注意したいのは感覚受容細胞が順応するのか、脳が順応するのかという問題です。
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刺激を伝える仕組み
細胞の膜電位
細胞膜は脂質分子の二重層の海に例えられタンパク粒子が小島のように浮いています。タンパク粒子はNa+-K+ポンプと呼ばれ細胞膜を境とした内外のイオンによる電子のやり取り行います。細胞外液にはNa+がK+よりも多く、細胞内ではその逆という定常状態が維持されます。内外の電位差約は60mVを維持し、ポンプが1回転ごとに3個のNa+を細胞外に放出し変わりにK+を2個取り込みます。このイオンポンプの回転に使うエネルギーは細胞が使うエネルギーの3分の2に値し、運動が保たれている状態が細胞が生きている状態です。
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刺激を伝える伝達手順
なんらかの外来刺激
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刺激の受容»細胞内外のイオン濃度差の変化により細胞膜の電位が変動し電位差が生まれる。
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電気信号の伝達
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Cª2+チャンネルの開口につづき神経伝達物質の放出
↓
シナプスが神経伝達物質の受容»細胞内外のイオン濃度差の変化により細胞膜の電位が変動»活動電位の発生
↓
電気信号の伝達
↓
中枢神経系
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脳の感覚野
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感覚器はどのように生まれるのか?
胎生初期の器官の形成
感覚器の眼/内耳/鼻/舌/皮膚/筋紡錘/ゴルジ腱器官/特殊血管壁などは、神経細胞か感覚受容細胞かどちらかの一方が、特定刺激を信号化し伝達するという役割を担います。
この2種類の細胞は、ともにその祖先を胎生初期、器官というものが存在しない球体だった頃、その表面をおおっていた外胚葉に求めることができます。
この外胚葉の変容し、感覚器に何れ変容する部分は、体内にめり込むようにして内部に腔ができ、外胚葉由来細胞に閉じ込められ形で残っているという点にも注意が必要です。
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嗅覚と味蕾
鼻粘膜、口腔粘膜は原始的な感覚器ともいわれ、鼻粘膜は神経細胞が外界に露出しており、味蕾は感覚受容細胞(味細胞)が外界に露出したしている。
神経細胞と感覚受容細胞の大きな違いは、神経細胞は信号伝達のための長い線維状突起をもつのに対し、感覚受容細胞はそれを持たず、特定の神経細胞の信号をすぐ伝えています。
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皮膚の形成
皮膚は表皮と真皮の2成分あり、表皮は外胚葉由来細胞の集まりで、真皮は中胚葉が変形して非常に丈夫になったものです。
皮膚感覚のおおくは真皮とその皮下脂肪層、血管壁に絡み付くようにのびる神経線維が刺激検出しています。
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網膜と内耳膜の形成
網膜と内耳膜は外胚葉が体内にめり込むようにして内部に腔を作り、外界スペースに面するかたちで形成されます。
網膜での外界スペースは視細胞層(肝体/錐体層)と網膜色素上皮層とすきま(これが大きく開けば網膜剥離と呼ばれる状態になる)であり、
内耳での外界スペースとは膜迷路皮(外胚葉由来)が囲む内リンパを満たした場所のことです。
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動物のインターフェイスレイアウト
生命は、まず外界と内とを隔てる膜が形成されると、つぎに、鼻/口腔粘膜が生まれ、食べ物とそれ以外かを判断するために器官が形成されます。動物になるためには、次に運動を始め、一般感覚と呼ばれる体性感覚や皮膚感覚が強化されます。それに伴って、遠くの状況をいち早く知るために視/聴覚器官形成され、この2つの器官は構造も複雑です。これらの重要な機関が脳の周りに集結し、そのインターフェイスのレイアウトは受講部分と頭脳への配線や、機能と役割からと考えられます。
- 食べる
- 視覚: 眼球内網膜で色や形を見る。経験値から食べ物とそれ以外を見て分ける、
- 触感: 手で圧を加え、そのものの堅さを経験値から噛み砕けるものか、それ以外を感じ分ける、
- 嗅覚: 体に危険な菌が住んでいないか、経験値から(時には直感的に)嗅ぎ分ける、
- 味覚: 口腔粘膜によって栄養成分を、経験値から(時には直感的に)感じ分ける
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- 危険を察知する/探す
- 聴覚: 左右の内耳コルチ器官および鼓膜の振動を捉え、方角や距離、経験値からその質量や特性と聞き分ける、
- 首: 聴覚による方角情報から、目標物に首を向け、視覚内に入れる。
- 視覚: 眼球内網膜で色や形を見る。経験値から特性を見て分ける、
食べる運動は、眼-鼻-口の順で行いこれらは縦に並んでおり、探す運動は、耳-眼を使いこの二つは横に並んでいる。これは重力がある大地を移動する生き物ゆえのレイアウトと考えられる。
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脳で感じる
物質が心を変える
お酒を飲むと楽しくなったり、コーヒーを飲むと眠れなくなるのは、これらは脳で働く物質の影響によるものです。先に述べた化学物質によって引き起こされる化学的刺激は、特に血液中成分が、脳に直接影響を与えています。つまり、何らかの方法で血液に脳の刺激となる物質を流せば心をコントロールるはずです。ただし、血液脳関門が脳を守る働きがあり、有害物質を事前に排除しますが、アルコールや麻薬など一部の分子はこの関門をくぐり抜ける事が出来ます。その量や種類によっては致命傷を引き起こします。
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心の働き
心の働きを大きく3つの要素に分けて考えられます。
「欲望」何かを欲する願望、
「感情」好き/嫌い、喜び/怒り/悲しみ、といった気分、
「理性」判断力、予測といった物事を知る能力、
これらの関わりが心の作り出していると考えられます。
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脳を構成する分子
アミノ酸:
もっとも一般的な神経伝達物質で、情報伝達全般に関連に関与する。
⁃ グルタミン酸: もっとも典型的な興奮性伝達物質。
⁃ タウリン: 脳内に広く、高密度に分布。
⁃ ギャバ(=γ-アミノ酩酸): 最も多量にある抑制性伝達物質。
⁃ その他: アスパラギン酸、グリシンなど20種類ほどあると考えられている。
生理活性アミン:
カテコールアミン類
⁃ ドーパミン: 脳内に広く分布し攻撃性、創造性、精神分裂病、パーキンソン病に深く関与。
⁃ ノルアドレナリン: 脳内に広く分布し、うつ病、幸福感、不安など情動に深く関与。
インドールアミン類
⁃ セロトニン: 脳内に広く分布し、覚醒、睡眠など生体リズムや情動に深く関与。
⁃ メラトニン: セロトニンから作られ、生体リズムに深く関与。
イミダゾールアミン
⁃ ヒスタミン: 全身の組織に存在するが、脳ないにも存在すると考えられている。
コリン系
⁃ アセチルコリン: 一番最初に発見された神経伝達物質で記憶に関与。アルツハイマー病の治療薬として注目
神経ペプチド
オピオイド・ペプチド(麻薬様物質)
⁃ エンドルフィン類: βエンドルフィンなど痛みを緩和する機能。幸福感にも関与する説がある。
⁃ エンケファリン類: メチオニン・エンケファリン、ロイシン・エンケファリンなど同上の機能という説が有る。
⁃ ダイノルフィン類
その他のペプチド
⁃ P物質: 末梢から中枢への痛覚伝達に関与。
⁃ ACTH(コルチとロピン): 記憶に関与。
⁃ バソプレシン: 記憶に関与。
⁃ その他にも様々な神経ペプチドが存在するとされ解明中。
その他
- 気体物質
- 一酸化チッ素(NO): 楯環器系や免疫系に深く関与。
- 一酸化炭素(CO): 長期記憶に深く関与など
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脳内神経伝達物質の種類と役割
主な脳内神経伝達物質は以下の5つです。
- ドーパミン
- ノルアドレナリン
- セロトニン
- アセチルコリン
- ギャバ
これらは多すぎても少なすぎても異常状態です。
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ドーパミン
- 多すぎ: 精神分裂
- 少なすぎ: パーキンソン病
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ノルアドレナリン/ドーパミン/セロトニン
- 多すぎ: 不安、そう病
- 少なすぎ: うつ病
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アセチルコリン
- 多すぎ: パーキンソン症候群
- 少なすぎ: アルツハイマー病
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脳内物質の処方
精神分裂、パーキンソン病、そう病、うつ病、 パーキンソン症候群、アルツハイマー病にはそれぞれの特効薬があり、それぞれに脳内物質を活性化させる薬です。また麻薬も同じ原理ですから、同じように服薬し脳内物質を活性化させます。服薬つまり血液に物質を流し込めれば処方できます。
- 注射: 血液に直接服薬
- 食べる: 消化器官、主に小腸から血液に服薬
- 嗅ぐ: 嗅粘膜から血液に服薬
- 吸う: 気体を呼吸器官、肺から血液に服薬
- 皮膚: 塗り薬などで皮膚から服薬
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まとめ
何百年先のことにかわからないが、今までの観念ではおおよそ体操とは呼べないような、ある種の奇妙な体の動きが創造される。それがある目的にしたがって適切に処方されると、性格も知能も感情の状態も、その人が望ましいと思う方向に変わって行く。じつは、性格も知能も感情も、何を望むかの判断や意志さえも、それらの働きのすべてが、、広い意味での、からだの動きそのものなのである。このような可能性をもった体操を私は本気で考えている。
野口三千三(1914-1998)「原初生命体としての人間-野口体操の理論」岩波書店
近代は科学の時代です。結果を重視する西洋思想は科学の原理にも適応させ飛躍的に進展しました。食文化、医療、体操やスポーツ、また芸術も西洋思想にを基盤にしています。
医療は「健康」という主題からのがれられないので、「病は治すもの」ではなく「治るもの」という考え方は許容できないし、料理は「美味しいものを作る」という主題は「美味しくいただく」は含まれないし、スポーツは「勝つ」ために練習を怠りません。しかし、原書生命体の状態で現在の文化を検証しますと、始めに述べた、「外来刺激を受け反応を外界に返し、その様子を観察」するという基本活動は弁証法的とも取れますが、感覚には知性のような構造は有りませんから、行為をだけが繰り返しているという方が近いように思えます。すると感じながら動くことが知能や感情を進化させると考える方が自然に思えます。
視/聴覚芸術とそれ以外の嗅/味/触覚芸術の可能性を考えることで、暗黙の内に不動の価値を疑われない芸術という文化を見直し、現代の芸術が可能性を探求する予定でしたが、裾が広すぎたのか1年では求まりませんでした。(反省)