先週末、2024年5月4-5日、台湾の鳳甲美術館で、台湾アーティストの許家維、張碩尹、鄭先喻「浪のしたにも都のさぶらふぞ」のオープニングイベントに出演しました。この作品は昨年山口情報芸術センター[YCAM]で製作された作品の彼らホームの台湾での展示です。日本からは、本作品の演奏作曲を手がけた浄瑠璃三味線の田中悠美子さんと私、香港からは作曲家Tak-Cheung Hui、台湾からはパーカッショニストのRho-Mei Yuが参加しました。
> 台湾 鳳甲美術館 《浪濤之下亦有皇都》許家維+張碩尹+鄭先喻
私が出演するきっかけは、田中さんが展覧会オープニングで山口に来られる際に、関連イベントとして一楽儀光さんと中上淳二さんとで開催したライブイベントに、田中さんの希望でそのイベントの前座で琵琶演奏を行った際に、台湾アーティストたちに是非台湾でも琵琶演奏を披露してほしいと頼まれたことが事の始まりです。
ライブパフォーマンスの概要
台湾でのライブでは、はじめ、田中さんの藤倉大委嘱作品、義太夫三味線ソロ「Jiai」のショートバージョンが披露されました。続いて、TakのコンピューターによるドローンとRho-Mei Yuによるパーカッションの演奏で「等晶播種」と「浪のしたにも都のさぶらふぞ」の2作品no
パーカッションパートが編曲され曲の演奏です。Rhoさんは現代音楽出身の演奏家で、緻密な演奏です。そのあと、私の出番で、この一年間取り組んでいた薩摩琵琶古典曲「弓流し」の抜粋も上演されました。
「弓流し」の解説と選曲理由
「弓流し」の解説をしますと、平家物語の壇ノ浦の合戦(下関・門司3月24日)が行われる一か月前のエピソードである屋島の戦い(香川2月18日)に関連しています。この物語には2つの弓にまつわる話が含まれており、一つは有名な那須与一が扇の的を撃つエピソードであり、もう一つは義経がうっかり海に弓を落とすエピソードで、これが「弓流し」と呼ばれるものです。屋島の戦いは能楽でも演じられる作品「屋島(八島)」にも関連しています。
この曲が選ばれた理由は、壇ノ浦の物語がキャラクターが多く、特に美談ではない点、琵琶の師匠の指導のもとで選ばれました。特に、「弓流し」は、源義経が海での戦いの中で弓を落としてしまい、周囲が止めることも聞かずに拾おうとする場面を描いています。その理由は、義経が「弓の張りが弱かったんで、平家に拾われたら笑われるから」という、けっこうどうでもいい理由だったというもので、滑稽でもあり、それを美談とする日本的とも言える曲だからです。
琵琶の演奏スタイル
琵琶は三味線とは異なり、本来ソロ楽器であり、正確に同じ曲を繰り返すという考え方は元々なく、演奏中に自由に改変することが許されています。奏法には決まりがあり、奏法の中でのアレンジや短縮系、繰り返しが自由に行われます。唄い方は多くの演奏家が一本調子で行いますが、本来は霊に取りつかれたように歌う呪術的な側面がありますので、キャラクター(霊)に応じて表現を変えるべきです。そのため、私は一つの唄の中で義経が「判官」「九郎」と呼ばれ、分かりにくいので、「判官九郎義経」と統一し、義経は若いので現代語風の口調で無表情に表現し、義経に助言する兼房は古典的かつ感情的に表現しています。
モーションセンサーによる演奏
曲の冒頭のダンスパートですが、近年、自身が推奨するダンスのメソッドである「インターアクトメント」を実践するために、「祇園精舎の鐘の声…」の音をベースに声から動きを組み立てる演目を行いました。メディアアート的側面の表現としてSonyのモーションセンサーmocopiを使用し、サイン波とホワイトノイズを操作した演舞が行いました。
一年近くアレンジしている間に、持続音のEQの調節とパンニングのコントロールだめに落ち着きました。踊っている最中は手がふさがっているので、音色を調整で来ませんし、加速度のアタックをトリガーにし、パーカッションを発音する動きは、単調になってしまい、ダンスとしては物足りないパフォーマンスになることから現在は使っていません。指輪型センサーGENKI Wavはソフトウェアは素晴らしいのですが、あまりにも不安定すぎるので結局すべてカットしました。現状のアプリケーションではこれ以上の改善が難しい状況ですが、まだ可能性を秘めていると感じています。
パフォーマンス後半
パフォーマンス後半は4人でのセッションが行われ、自分は新参者で恐縮ですが、踊りで参加したことから象徴的なポジションになってしまっているようです。とくにモンスターボイスというシーンで声色をTakがリアルタイムでエフェクトし、激しいシーンになりました。一押しなので繰り返しますが、これも自身が推奨するダンスのメソッドである「インターアクトメント」を実践しています。
パフォーマンスの会場
パフォーマンスは2日間行われ、初日は展覧会会場の鳳甲美術館で、実際に展示作品の中で行われ、2日目はC-LABというアートスペースのパフォーマンススペースで行われました。両方の会場ともに満員で、100名以上、合わせて250名近くがご足労いただきました。