20世紀初頭におけるアニメーションの隆盛は、動きの線や動きの研究をさらに推し進め、エンジニアたちが動きの中に生命を感じ取るという独特の感性を考察しました(図1)。それは動きに生命を宿す試みで、かれらは生きている動きを本質を捉えようとする探求でもありました。一方で20世紀、人工知能研究と並行して人工生命という学際的分野が発展し、ソフトウェアからロボット工学に至るまで、生命的振る舞いの研究が進展しました。これらの研究は、アニメーションといった従来の美学とは異なる観点から「生」の証明を試みるものでありました。そこで、ラテン語のアニメート「命のないものに生命を吹き込む」を基にアニメーションから人工生命研究までを広く考察範囲に含めることができると考え、以下に述べていきます。
本論文では、動きの中に「生」の本質を追求するのではなく、生を読み解く手法を検証し「動点=ノード」という概念を用いて「生」についての考察を展開します。特に注目したのは、自然現象の定量的計測がもたらした抽象性と、そこに含まれる「生のデータ」です。これらは、ダンスを一種の計算手段として捉える新たな視座を提供するでしょう。
具体的な事例として、エティエンヌ=ジュール・マレーによる写真を用いた運動研究、ジャドソン・チャーチ・グループによるアルゴリズムとしてのダンス、そしてウィリアム・フォーサイスのSynchronous Objectsプロジェクトを取り上げ、それぞれの時代における新たな表現の可能性について検証を行ます。