絵画は目で見るものと考えられてきましたが、全く別の方法で鑑賞することもできます。それが「触覚的鑑賞方法」です。

この方法を用いると、これまでなんとなく難しいと思っていた抽象絵画と呼ばれる難解な作品が、より身近に感じられるようになるでしょう。
- 1: 絵画の前に手をかざし、絵画に当てられた照明をうまく利用して自分の手の影を絵画の上に落とします。
- 2: 自分の手の影と意識をつなぐように心がけ、影の手で絵の中を自由に触れていきます。このような方法で絵画の中をあちこち探検してみると、様々な感覚が生まれてきます。
少なくとも、これまで意識していなかった色や形状に対して新しい感覚が芽生えるでしょう。これまであまり意識してなかった絵の部分の前後関係も明らかとなり、例えば滑らかな曲線は「滑り台」のように感じたり、背景が赤であればその「温かみ」というものも感じられるようになります。
海外に関わらず 写真にも有効です。また他の鑑賞者がいなければ、映画のようなものでも移行できます。触覚を通して新たな解釈が可能になります。
美術史において「触覚」は重要な概念として捉えられてきました。作品の表面の表象を触知可能な「触覚」という生理的・物理的抵抗感において記述しようとするその特異な思考は、W・ベンヤミンやG・ドゥルーズらも注目を寄せました。
注意点
この手法はもちろん、大きすぎず小さすぎない絵画でしか実行することができません。また勢い余って絵に触れてはいけません。照明もいい感じに当たっている会場でしかできません。