分別ごみ箱デザインから考える社会 1

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近年の海外観光客の増加に伴い、各地で「ごみのポイ捨て」問題が発生しています。これは自国のルールとの違いや、日本は公共のごみ箱が少ないことが原因です。環境省は自治体と民間事業者と連携し、ポイ捨てやごみの発生抑制対策を実施しています。ナッジを活用したごみ箱や、ごみ処理を啓発する観光アプリを用いて観光地の美化に努めるプロジェクトです。全国からアイデアを募り、実施することで美化だけでなく、それ自体が観光資源となり得ます。

私たちもこのコンペに応募しましたが、最終的には落選しました。しかし、資料を作成する過程で多くの気づきがあり、それをノートとして残しておきます。

[環境庁] 観光地におけるごみのポイ捨て・発生抑制対策等モデル事業(観光庁連携事業)の公募について

はじめに: ゴミとごみ

近年、「ゴミ」ではなく「ごみ」と表記する理由は、カタカナが国外から入ってきたものを示す文字であり、「ゴミ」と書くと国外から持ち込まれたように錯覚されるためです。自国の不要物は「ごみ」とひらがなで表記します。市販のごみ袋には「ごみ」と書かれていますが、街中の看板には「ゴミ」と書かれていることが多いです。ひらがなは文中で埋もれて見づらいという問題もありますが、一般的には「ごみ」と表記するのが正しいです。

どれだけの人が日本に来るの?

ごみ箱のデザインを考える上で、どの国の方が日本に訪れているのでしょうか?2024年3月のインバウンドデータは以下の通りです:

インバウンド 訪日外国人動向2024年3月

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  1. 韓国 663,100人
  2. 中国 452,400人
  3. 台湾 484,400人
  4. 香港 231,400人
  5. タイ 131,700人

11位までが全てアジアで、12位が英国です。町で見かける欧米の方は目立つだけでごく一部です。

韓国人には日本のどこが好き?

韓国からの観光客に人気の観光地は以下の通りです:

1月:箱根
2月:北海道
3月:東京
4月:足利
5月:大阪
6月:鎌倉
7月:広島
8月:鹿児島
9月:沖縄
10月:茨城
11月:山形
12月:長野


海洋スポーツを楽しむ人々には9月の沖縄が人気です。「東洋のハワイ」と呼ばれる沖縄は休養地として有名です。

中国人は何県に行くの?

中国人が行ってみたい日本の観光地は:

1位:富士山
2位:北海道
3位:東京

中国人観光客は遊園地やテーマパーク、食事、買い物、桜鑑賞、温泉、アニメや映画の舞台を訪れることを目的としています。日本文化や歴史を体験するなら京都、近代的な日本文化とショッピングを楽しむなら秋葉原が人気です。

中国人が感じる日本の観光イメージ、日本人より認知が高い施設に「阿寒湖温泉」や「川村記念美術館」

今回のリサーチには直線つ関係はありませんが、日本の観光資源や印象に関する日中比較調査をによると。「富士山」「東京ディズニーリゾート」は日中両方で認知度が高い一方、「京都国際マンガミュージアム」「川村記念美術館」といった文化施設や、「阿寒湖温泉」「大阪天神橋筋商店街」といった地域は、日本人の認知度は低いものの訪日経験を持つ中国人に広く認知され、訪問意欲も高い。反面、「白川郷」「江ノ電」などは、日本人による認知度の高さに比べて中国人は低い傾向も示されている。

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>和歌山・白浜のインバウンド回復 水際措置撤廃で中国人が急増

この記事を読んで気づいたのは、中国ではきれいな海に行くには南のハノイなどまで行かなければならないため、日本のビーチは距離的に近いということです。そのため、北京や上海から日本のビーチに訪れる観光客が多いようです。

アジアと欧米の観光に求めるものの違い

ビーチの観光資源を開発するための記事には、アジア人はフォトスポットを好み、欧米人はナイトライフを好むと書かれていました。また、日本人は紫外線を気にするという興味深い点もありました。

アジアのごみの分別について

ヨーロッパでは分別ごみ箱が一般的で、特にドイツではごみ箱が分かりやすく設置されています。日本でもファーストフード店などで細かい分別が行われています。各国の言葉でごみ箱のデザインを検索すると、日本同様に分別意識が高まっているのがわかります。タイではほほえましい地元ならではのDIY感あふれる分別ごみ箱が多く見られます。

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韓国のごみ箱
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台湾
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タイ
ゴミ箱デザインを集めただけの動画の紹介

アメリカのごみリサイクル現状

アメリカのごみリサイクル率は世界平均よりも低く、多くの課題を抱えています。主な課題は以下の通りです。

  • 資源ごみの戸別回収がない地域が多い: アメリカ全土で資源ごみの戸別回収が実施されているわけではなく、地域によって収集システムや回収対象品目が異なります。そのため、リサイクルしたい市民が適切な方法で分別・廃棄できないケースが多く発生しています。
  • デポジット額が少ない: 飲料容器などのリサイクルにデポジット制度を導入している地域もありますが、デポジット額が低いため、リサイクルするメリットを感じにくいという声が多くあります。
  • リターン・リサイクルともに時間と手間がかかる: リサイクルセンターまでの距離や営業時間、回収業者の利用などが煩雑で、リサイクルに時間と手間がかかるという課題があります。
  • 分別に関する情報が普及していない: 正しい分別方法に関する情報が十分に普及しておらず、誤った分別をしてしまうケースが多く見られます。

3R,4R

3Rとは「Reduce(リデュース)」「Reuse(リユース)」「Recycle(リサイクル)」の頭文字を集めたものです。最近では、さらに「Refuse(リフューズ)」を加えた4Rがあります。

これらは複数の場所で自然発生的に生まれた考え方や行動指針です。

1970年代に環境問題への意識の高まりとともに、様々な廃棄物削減・資源有効活用に関する取り組みが世界各地で始まり、1990年代に3Rという概念が広く認識され始め、1992年のリオデジャネイロ環境開発会議(アジェンダ21)で、3Rが重要な環境対策として提唱されました。

日本のリサイクル

環境庁

まとめ

課題に対する考察

日本は海外に比べて比較的リサイクル意識はすすんでいるのは人口未収率が高いことが指摘できます。アメリカや中国など大国はアジアのよう小国に比べるとリサイクル率向上を阻害する大きな要因となっています。これらの課題を克服するためには、以下の点に焦点を当てることが重要と考えられます。

  • 利便性の向上: リサイクルをより簡単で便利なプロセスにする必要があります。具体的には、全域での資源ごみの戸別回収の導入、デポジット額の引き上げ、リサイクルセンターのアクセス向上、分別情報のわかりやすい提供などが考えられます。
  • インセンティブの創出: リサイクルするメリットを実感できるようなインセンティブを創出する必要があります。デポジット額の引き上げに加え、リサイクルポイント制度の導入や、リサイクルした市民への優遇措置などが考えられます。
  • 教育・啓蒙活動の強化: 正しい分別方法やリサイクルの重要性に関する教育・啓蒙活動を強化する必要があります。学校教育や地域活動を通じて、リサイクルに関する知識や意識を高めることが重要です。

次回は分別の現状を報告します。

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