Kepler(2000)構造解説

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2000年に大学の卒業制作として制作した『Kepler』についての解説をします。この作品は、農業用パイプで試作された五方十二面体の中に、アルミパイプ製でフレキシブルジョイント(羽根で自作)の六面体が内蔵されています。これは、ダンスの動きをサポートするアイデアから生まれたもので、六面体を形成する6本のパイプを自由に動かすことができます。まるで中国武術の三節棍のような動きをします。『Kepler』は舞台装置、エクササイズ器、そして公園遊具として創作されました。

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世界の真理としての多面体から、想像の真理としての多面体へ

タイトルにあるケプラーは天文学者ケプラー(1571-1630)です。ケプラーは宇宙の構造に正多面体が関わっていると考えましたが、その仮説を証明することはできませんでした。私には、宇宙の構造が幾何学に還元できるとは思えませんが、空間をとらえるアイデアとしては面白いと思い、振付のアイデアに取り入れました。

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身体の周りに多面体を配置して動きの空間を定義するアイデアは、ルドルフ・ラバンが有名です。彼はXYZの三方向を表す面の頂点を結んで正12面体を形作りました。

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私はこれにさらに、正多面体が5種類しか存在しないことを考慮しました。それぞれの多面体は対応関係にあり、例えば正四面体と正六面体、正八面体、正十二面体があります。これらの形状同士が隣接し合っている様子を次元として捉えると、互いに影響し合っているように想像できます。

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筆者自作

特に十二面体と二十面体は親和性が高く、面と角の数が対応しています。これら2つは五方十二面体として組み合わせられます。また、正6面と正4面も対応関係があり、我々の手と足の関節を結ぶと正四面体になります。このように、自分の周りに存在する多面体を想像してみると、普段は意識していない空間が見えてきます。

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この作品では、ドームには五方十二面体が使用されています。また、ドーム内に置かれる様々な形は、様々なアイデアを連想させる道具として機能します。

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五方十二面体

正四面体は辺が自由に動きますが、正六面体は不変の多面体です。外側に置かれた十二面体や二十面体と内側の四面体や六面体が相互作用し、想像上の形状を生み出します。この関係は、外側の規範と内側の道具が相互に影響し合っています。

フレキシブル十二面体という遊具

卒業制作として提出されたのはこのフレキシブル十二面体です。各辺の長さが1mで、一つの頂点が床からちょうど1mの高さに点所から吊られています。力を加えないと崩れますが、どれかの辺を持ち上げると十二面体の形が現れます。形状は、吊り点を中心に対応した辺が形成されます。畳み方によっては、六角形や棒状に変形します。入念なスケッチがありましたが、資料を見つけることができませんでした。

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幾何学とフォーサイスの「インプロヴィゼーション・テクノロジーズ」

大学生の頃、手に入れていなかったものの、フォーサイスの「インプロヴィゼーション・テクノロジーズレクチャー・ブックDVD-Rom」という存在は認識しており、内容は断片的な情報から理解していました。この「Kepler」ではその断片的な理解から発展させ、環境から得られた点や線を具体的に体でなぞるという手法に取り組んでいます。

また、フォーサイスにはラバンをベースとした空間のポジショニングのエクササイズがあり、この創作もラバンやフォーサイスの歴史的な流れに沿って行われています。

卒業制作展

2000年の2月に行われた卒業制作展では、高さ5mにも及ぶドームが会場に搬入できなかったため、教員室のロビーに設置されました。ドームの天井にはカメラが取り付けられ、床から天井を見下ろすスクリーンが床に設置されました。会場の音響効果として、Mと呼ばれるプログラムでアポロ11号の音声通信がランダムに再生され、照明効果として秋葉原秋月電子産のマイコンであるAKI80を使用し、6台のハロゲンランプを制御することで構造体の影を演出しました。たにも、大型ブラウン管では、高橋悠治の「反方法論序説」手の思考からサブタイトルとして上演されました。

それらの演出を駆使して、展示期間中にはパフォーマンスも行われました。その中で、アポロ11号をテーマにした「The Crater#1」と、画家フランシス・ベーコンをテーマにした「Figure in Movement」が上演されました。

また、特別企画として、環境デザインの羽山孔明先生による、オリヴィエ・メシアンの思い出をレコードとともに語る会が開催されました。羽山先生は、音楽家を目指した若き日の経験やメシアンの鳥のスケッチ、トゥランガリーラ交響曲などのレコードを通して、貴重な思い出を共有しました。

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マイブリッジ
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フランシス・ベーコン Figures in movement.
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20世紀初頭.近代化によって身体とメディアの間、身体とシステムの間のバラ
ンスが揺らぎ出した。我々はこの問いに対応すべく人間の運動はどこにあるかについて、思考した結米、スポーツのような局限の肉体と、ブレイクダンスのような解体された動きに行き着いたこれらはなんの解決というよりも、バランスに対する受け身のようなものでしかない問題なのは運勤に対する言葉、とりわけ”どこに運動(ダンス)は存在するか!?”であろう、いくつかの答えのうち今、言えることは、身体がっくり出した運動ではなく、運動をつく
り出す身体を、身体で受け止めること。動きになっている状態こそが意識され
るべきである。(東北芸術工科大学 卒業研究・製作展1999/論文・作品集)
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