このワークショップは、見る能力、つまり視力を拡張することを目的としています。ただし、ここで言う視力とは、一般的な視力検査で測定されるものではなく、見るという行為自体をアップデートすることです。
Contents
視力の新しい定義とその拡張
このワークショップの基本コンセプトは、バレエダンサーが鏡を使って技術を向上させるように、自分の姿を客観的に見ることは、新しい自己イメージを形成するのに役立つのです。小型のCCDカメラとディスプレイを使用し、このワークショップでは視覚体験を拡張します。
小型のCCDカメラとモニターを有線でつないだシンプルなセットを使って、自分を撮影してみましょう。自分がその環境の中に実際に存在しているという実感が湧きます。特に、カメラの高さや方向を変えてみることで、自分の視点がどのように変わるかを体験できます。
例えば、誰かと会話をしているところを、カメラで鏡で自分を見るように、現在進行中の自分を撮影し観察します。目の高さで撮影すると、自分と対象物の関係だけが見えます。しかし、カメラを目線より高くして撮影すると、環境全体が見えてきて、自分と対象物が空間の中でどのように存在しているか、その文脈が大きく変わります。目の高さで見ている人の背後から撮影すショットを専門用語で「肩越しショット(OTS, Shot/ Reverse Shot)」と呼びますが、目の高さの際は「私は会話をしている」という文脈なのにたいして、カメラを高くすると、「部屋のなかで2人は会話をしている」といった主語に当たる部分が変わります。ここでは、私が常に視点の中に含まれていることが重要です。
このプログラムはいくつかのセッションに分かれており、参加者は自分の視覚体験を拡張する様々な方法を体験します。それぞれのセッションを通じて、自分自身と環境との関係を視点という立場から、見直すことができるでしょう。
0 |目のエクササイズ
0-1 |目の体操
まずは、目の体操からスタート。見るためには、眼球を動かすこと、目のレンズを動かして、フォーマスを合わせることの二つの運動でできています。親指を立て、手を伸ばして、その左右の親指をリズミカルに眼球を動かして見る。これができたら、リズムは一定のまま、左右の手の位置をゆっくり動かしてみます。
0-2 |目の体操遠近感
このトレーニングは、野球のバッターが行うクササイズです。右親指は顔の近くに、左親指はてお延ばして、左右の親指に遠近感をつけます。そしてリズミカルに近い右親指、左親指、背景の部屋の壁という順に目線を動かしていきます。
0-3 |一度にフォーカスできる範囲を確認する。
人差し指先動詞を合わせてその合わさっているところを見ます。次にゆっくり指同士を引き離します。その時、視線を両指先を見ます。引き離しているうちに、左右どちらかの指先にフォーカスしてしまいますが、可能な限り二つの指を同時に見るようにします。(これはとても難しく7mmできればいいとこです)
0-4 |歩きながらフォーカスエクササイズ
もし複数人でワークショップを行うなら、スペース内をランダムに歩き回り、歩いている人の様々な部位にリズミカルに素早くフォーカスします。これにより、視線を素早く切り替えるトレーニングになります。
1 |道具の説明
用意すもの
- カメラとモニターが直結されたシンプルな装置 x1
- 黒い風呂敷 x1
- 天気用法で使うような支持棒 x1
グループ分け
- 3人
2 |視力の拡張を体験
一人が黒布をかぶりモニターを持ちます。もう一人が、カメラをもって周りの景色を映します。簡易的なVRの体験ができます。3人目は支持棒を持って、ゲームを行います。
ゲームのルール
ディスプレイ担当者はカメラ担当者に指示を出して、支持棒の先を探すゲームです。
- まず、支持棒担当者がどこか空中に支持棒でゴールとなる点を決め、ジン日ができたら「ゲームスタート!」の声掛けをします。
- モニター担当者はカメラ担当者にカメラの右や上などのカメラ向きを支持します。
- カメラで支持棒の先が見つけられればゲームは終了。
感想を交換しましょう。ゲームでの工夫なその意見を交換してみましょう。
またカメラで撮影する際に、モニター担当者の体の部分を必ず映り込むように撮影支持を出すと、ゲームがスムーズに進行します。その理由を話し合ってみましょう。
3 |第3の目
カメラを体の様々な部分にマジックテープで取り付けて、普段とは異なる視点からの体験をします。例えば、カメラを腕や膝に取り付け、その部分から見る世界を体験します。他人がカメラを動かすときと自分の体についている時の感覚の違いにも注目です。ちなみに、自分の体にカメラをつけるとカメラ酔いがほとんどありません。簡単なゲームをしてみましょう。
ゲームのルール
カメラを体につけた人、モニター担当者、支持棒担当者に役割を分けます。
- 今回は支持棒の場所を固定せずに動かし続けます。
- カメラ担当者が主体的にカメラを動かし支持棒を追いかけます。
- ディスプレイ担当者はカメラ担当者が少し見づらい位置に動かし続けます。
一度感想を話し合ってから、カメラで自分の体の部分が映りこんでいる時と全く映り込んでいないときとを比較してみましょう。
4 |第3の目の記憶を活用
最後に、先ほどのツールは片づけて、もう一度0-4「歩きながらフォーカスエクササイズ」を行います。今回はカメラの記憶を使って、目だけではなく体の部位にカメラが付いているかのように色々な部分にフォーカスします。
これは「第3の目」の記憶を感覚のツールとしてインストールされているのため、0-4で行ったときとは異なった体験ができるはずです。
まとめ
- カメラというメディアを使い視覚という感覚器を少しずらすことで 普段意識されない視覚の機能を体感的に知ることができる。
- 視覚によって身体のイメージは変化します。
- また夢中になってイメージに取り組むことで動作への影響する。
- 一度体験した身体イメージはカメラがなくなった後も持続できる ことから身体イメージおよび運動イメージは感覚的に記憶の残る。
- 一般的に運動神経が良いとは 運動感覚を複数記憶し柔軟に取り 出せる頭脳にあり このワークショップはイメージによる感覚的な 運動神経の学習の可能性を示唆している。
5 |[おまけ] 2つの視点にフォーカス
上級者ワークショップとして、カメラを二台体につけて3第3の目のワークをしています。すると、第4の目も扱えるようになるかもしれません。
自己認識と視覚体験の拡張
このワークショップでは、視力という概念をただ見ることにとどまらず、行為自体が見ることと大きくかかわっていることが実感できます。ギブソンが晩年に取り組んだ「生態学的視覚論」では、見るとは全身を使っ見る行為について言及しました。このワークショップではカメラというメディアを取り入れることで、その先の、「見る際に自身の身体をどのように取り入れるか」によって、文脈が変更でき、さらには複数の視覚の文脈を同時に認知できる可能性があること示唆しています。私たちは鏡を手に入れることで新しい身体イメージを手に入れ、カメラを手に入れることでさらなる飛躍が創造されます。カメラというテクノロジーを通じて、見ることの新しい形を探求し、普段は気づかないような視覚体験の深化を目指し、見ることをアップデートします。