身体言語の新時代:インターアクトメントが切り拓くコミュニケーション革命

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interactment

インターアクトメント(”InterActment”)は、”interaction”(相互作用、交流)と”actment”(行為)の組み合わせ造語です。ダンスのように、ジャンルやメソッドに縛られない、また手話のように、言語化することに完全に依存しないその場で自然に生まれる身振りや動作を使ってコミュニケーションを促進するようなムーブメントをさします。

わざわざインターアクトメント(”InterActment”)という造語を作る意味として、ダンスには無数のジャンルと、それぞれの教師が持つ独自のメソッドが存在します。しかしそれらを融合する、いわゆるクロスオーバーはあまり見られず、各メソッドが独立してテクニックを洗練する傾向があります。SNSの普及により情報の公開が進んだ一方で、各ジャンル内での技術向上は活発であるものの、ジャンル間のクロスオーバーはあまり見られず、新たな横断的な表現が少ない状況です。これは、各メソッドごとに独特の作法や背景が存在し、それを理解し適用することが容易ではないことも一つの理由でしょう。また、自己の世界観が崩壊する可能性もあり、それがクロスオーバーの難しさを増しています。

そこで、ダンスの動きを単位ごとに区切り、それらを言葉の単語のように扱うことで、他のジャンルを侵害することなくクロスオーバーが可能ではないでしょうか。そして、デジタルツールを利用して動きの背景を考慮しながらコラージュすれば、ジャンルを超えた新しいムーブメントが生まれる可能性があります。さらに、ジェスチャーはコミュニケーションにおいて、言葉の補足的に用いられ、言語のメタ的な役割を担ってきましたが、手話やジェスチャーのような日常の身体言語を基にしたこのプロセスがデジタルツールとして使えるなら、それは新しいコミュニケーションツールとしての可能性を秘めています。

ダンスのジャンル間を超越するために新しいジャンルを作るのではなく、日常の感性に根ざした行動を基に様々な身体言語を構築すれば、自然言語と並ぶボディーランゲージが可能になるかもしれません。これを「ジェスチャーのアップデート」と位置づけ、このムーブメントをインターアクトメント(”InterActment”)とここでは呼びます。

指を差して方向を示す、誰かの仕草のまねをする、会釈をするなど、ある程度意識的な身体の動きに始まり、「はい」と言いつつ出るうなずきや、電話口で思わずでてしまうおじぎのように、ほとんど意識しないででてくるものもジェスチャーである。また、このようなコミュニケーションの場面で起こるジェスチャーとまったく同じような身体の動きが、コミュニケーションの相手としての他者がいないような場面でも起こることがある。「やっぱりそうだよな」と一人でつぶやきながら行う「うなずき」や、一人でテレビゲームをしているときにでる「ガッツポーズ」、ものを数えるときの「指差し」などがその例である。このようなものもジェスチャーとして含めて考えるとき、ジェスチャーの「自己指向性」という側面が浮き彫りになってくる。つまり、ジェスチャーには相手にある内容を視覚的に伝えるという「他者指向性」の機能だけが備わっているわけではないのである。

normal 791b4f22 1ce9 49e9 ba6e 11b92b889898 ジェスチャー・行為・意味」共立出版 (2002/5/13)
”第1章 人はなぜジェスチャーをするのか”喜多 壮太郎 (著)

ボディランゲージは、なぜ人類の長い歴史において、使えるようなコミュニケーションツールにまで発展しなかったのでしょうか?

手話でさえ、市民権を得たのはこの100年で、高等な言語として理解され研究されだしたのはつい最近のことです。また、複雑に構築されたダンス作品やサルサやフラメンコのような対話に趣を置いたダンスが、言語的なアプローチがなされていると考える言語学者も現在でもまだいないでしょう。

これは、記述の問題が大きく関わっているでしょう。話し言葉は、記述できるようになったことで現在のようなコミュニケーションツールへと、大きな進化を遂げました。しかし、ボディランゲージは基本的に口伝てきにしか記録できず、それらの記述の研究もメモ程度でしょう。そもそもスコアを紙に写したり読み上げたりするときに、動きから目をそらして、紙に向かってしまうのだから、研究が進まないのです!

インターアクトメント、つまりジェスチャーのアップデートのためには、現在のテクノロジーを使うことが不可欠です。動きを抽象的に取り出して記述し、辞書化することが重要でしょう。

もちろん、小さなコミュニティの中では、テクノロジーを使わなくても動きを言語として発展的に会話に組み込むこともできるでしょう。しかし、それは、多くのダンスのように、ジャンルごとに細分化されてしまい、言語間を横断できないでしょう。したがって、より抽象的な記号として取り出すことができ、スムーズに情報交換できることが不可欠です。

普段見過ごされがちなジェスチャーをここで新たに捉え直すことで、より豊かなコミュニケーションが可能になるとおもいます。ジェスチャーやダンスといった人間の動きを記述し自由に取り出し編集するツールがあるなら、もっと自由に身体表現ができるのではないでしょうか。

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