感覚のツール化つづき: 新しい身体感覚の探求

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毎週行うコンテンポラリーダンスのセッションは今週は自分の晩でした。長いものでYCAMの楽屋で「ダンス部」として毎週月曜日の夜にエクササイズを始めてから20年近くたっており、山口初のコンテンポラリーダンスクラスも自分の会は最後でした。

感覚のツール化の復習から

前回の「感覚ツール化」の復習から開始し、私たちは手ぬぐいを用いて、腕が伸びる感覚のインストールに取り組みました。このブログでも紹介した、ゴム風船を使った指のが伸びる感覚をインストールするエクササイズは行っていなかったことに気づきました。そこで、その場で代替案を考え、耳たぶを利用することにしました。

指先が耳たぶのように伸びる感覚

人差し指を耳の穴に上から挿入し、耳たぶを引っ張ると、指がゴムのように伸びる感覚を体験することができました。この練習を繰り返し行うことで、人差し指が自由に伸びる感覚を習得できたのです。じつは、耳たぶだけではなく、肘やあごの下の皮膚もよく伸びるので、指以外の体のぶいも伸びる感覚をインストールできます。いろいろ試してみましょう。

Yubitomimitabu
Nobiruyubi

視覚と身体感覚の統合

次に、私たちは床の傷を動きのスコアとして利用することで、見えたものを感覚的に身体に取り込む試みをしました。前にこのブログでも紹介したデボラ・ヘイの視覚から受けた印象を身体で表現する手法や。コンタクトインプロビゼーションのナインシースタックスミスが「Streamin」と呼んでいた、普段見えていないチリのようなものに意思を向けてる行為が参考になります。

通常、私たちは見たいと思うものしか見ていないため、床の傷やゴミは見落とされがちです。一方で、部屋が汚れていると思うと、先程まで見えていなかった、床の傷やゴミが強調されて見えてきます。このエクササイズでは、落としたコンタクトレンズを探すように、スタジオの床に近づいたり、角度を変えたりしながら床を注意深く観察し、床をひとつのスコアとして取り出し見ましょう。

床の傷を使った動きの実践

次に床の傷のスコアで試した一連の動きを、流れで行ってみます。このエクササイズでは、まず壁付近からスタートします。床の傷は壁付近には存在しないため、壁の近くを起点として、床の傷を茂みや障害物のように想像しながら、それを避けて部屋の中心へと進んでいきます。部屋の中心に到達したら、一度立ち止まり、周囲の景色をじっくりと観察します。

この際、自分が現在「ここにいる」という感覚に意識を切り替えます。次に、来た道を戻るのですが、今度は床の傷のイメージを自分の中にインストールし、まるでその傷になったかのように動きながら戻ります。このエクササイズのポイントは、眼から入ってきた印象を自分の外側にに展開する試みと、印象を身体内部に取り込み、それを身体の内側の反応として表現する試みで、これら二つは全く違う感覚です。ただし、手話などは、自分の身体に起きている表現と、胸付近にミニチュアとして表現するものが混在した表現でもあるように、身体の内部外部の感覚は相容れないとはいえ、素早く切り替えながら表現はできるようです。

Yukanokizu

簡易VR体験

少し蛇足になりますが、床の傷を表現する際の「感覚のインストール」に役立ちます。このエクササイズでは、手鏡を使用します。手鏡を天井に向けて持ち、鏡に映る天井を覗き込みながら歩きます。この方法で、天井の凹凸がまるで自分の足元にあるかのような錯覚を体験できます。私たちはこれを簡易VRと呼んでいます。この時の足の動きは、実際に凹凸を避けて歩いているかのようなリアリティを持っています。

鏡を使った多次元を作る

最後にご紹介するのは、少し冒険的なエクササイズです。このエクササイズでは、片手に鏡を持ちながら、先ほどの床の傷に関する動きを試します。鏡を傾けて自分の身体が少し映り込むようにすると、動きを捉える方法が変わってきます。

実際に数人でこのエクササイズを試したところ、ダンサーが体験する動きと外から観察する動きの間には大きなギャップがありました。体験者が感じる情報の量は、外から見ている人には完全には伝わらないことが明らかになりました。このことから、今後このエクササイズの展開には、さらなる工夫が必要だと考えられます。

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