
近年、デジタルコンテンツ市場において、成人向けコンテンツとして特異な進化を遂げている音声作品(同人音声)が急速な盛り上がりを見せています。これは、単なるアダルトコンテンツの枠を超え、高度な音響技術と緻密な心理誘導を融合させた、新しい表現の可能性を秘めています。
本稿では、この「催眠音声」がどのようにして成立し、どのような技術や表現手法を用いているのか、そしてそれがVRやメタバースといった次世代のデジタル空間、さらにはサウンドアートという芸術領域といかに深く結びつき、新たなフロンティアを切り拓いているのかを、技術的・芸術的側面に焦点を当てて考察していきます。
本論はアダルトコンテンツの紹介に見えますが、重要な点は以下にまとめられるので先に述べておきます:
人間の動作から得られるフィードバックの触覚感覚とそれを連想させるようなイメージをくっつけると新しいボディーイメージが作られ、その感覚回路が強化されること。
Contents
第1章:催眠オナニーの基礎
催眠オナニーの技術的背景
催眠オナニーとは音声作品に含まれ、その中でも催眠誘導の技術を用いて深い没入感を生み出すアプローチです。これは音響技術よりも、心理学的な要素が中心となります。
- 催眠オナニー仕組み:
- 暗示: 「あなたは徐々に興奮していく」といった直接的な言葉や、「温かい感覚が身体を巡っていく」といった間接的な言葉で、聴き手の意識と身体感覚に働きかけます。
- 没入: 一人称視点(「あなた」への語りかけ)や、特定のキャラクター設定を用いることで、聴き手を物語に深く引き込み、現実からの離脱を促します。
- 五感の利用: 聴覚情報だけでなく、五感すべてを想像させることで、脳内でよりリアルな体験を作り出します。
- 催眠オナニー効果:
- 現実からの隔離: 催眠誘導によって意識を一点に集中させ、日常の雑念や羞恥心を取り払い、性的興奮に特化した状態を作り出します。
- 感覚の増幅: 催眠状態では、身体の感覚が鋭敏になり、通常の自慰行為よりも強い快感を得られる可能性があります。
- ドライオーガズムとは、射精を伴わないオーガズム(絶頂)のことです。これは特定の性的行為や心理的コントロールによって引き起こされる現象で、特に男性の間で関心を持たれています。
催眠オナニーの多様なジャンル
催眠オナニーは、その表現内容によって様々なジャンルに分類されます:
- 双子系催眠:ステレオ形式で、二人の語り手が交互または同時に話しかける作品群です。情報量が増えることで催眠効果が高まるとされ、DLsiteのトップセールス作品にもこのジャンルが多く見られます。
- 音系催眠:音を催眠誘導に用いたり、体験そのものに音を絡めたりする作品です。バイノーラルビートや特定の環境音、時計の音、音楽などを暗示と結びつけて効果を誘発します。
- 変身系催眠:ユーザーが女性(女体化催眠/TS催眠)、人形(人形化催眠)、動物、あるいは無生物に変身する体験を提供する作品です。特に女体化催眠や人形化催眠では、連続した体験をコンセプトにしたものが多いです。
- 体験系催眠:特定の状況やシチュエーションを体験させる作品です。デート、特定の場所での体験、異世界での冒険など、現実では体験しにくい非日常的な状況を楽しむことができます。
催眠オナニーの定義と市場の広がり
催眠オナニーは「音声作品」に含まれます。「音声作品」とは、主に音声メディアをメインとするドラマCD、シチュエーションCD、ASMRなどアダルトコンテンツ以外も含む広い意味で定義されます。その中で催眠オナニーはオナニーをガイドする音声コンテンツを指す言葉です。その起源は同人誌即売会の文化圏にあり、初期2000年代は個人販売が主流でした。しかし現在では、多くの大手サークルが法人化し、巨大なマーケットを形成しています。
近年の人気の背景
催眠音声を含むアダルト音声コンテンツが近年盛り上がっている理由として、以下の点が挙げられます:
- ヘッドホンやイヤホンの音質向上:高品質なオーディオ体験が可能になり、音の臨場感が向上しました。
- VRの普及:単に音楽を「聞き流す」のではなく、「全身で体験する」コンテンツとして受け入れられる土壌ができました。
- 「一人称視点」の没入感:アニメや映画とは異なり、聴き手自身がコンテンツの中に含まれる(一人称視点)点が強調されています。これはゲームのように「自分自身が突入していく」感覚に近いとされています。
これらの要素が複合的に作用し、音声コンテンツ、特に催眠オナニーは、その独自の没入体験でユーザーを獲得し、市場を拡大し続けています。
ASMR(フェティッシュ音声コンテンツ)
ASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)は、心地良い音や脳がゾワゾワするような音を指す言葉です。元々は耳元でマッチを擦る音や髪を切る音の録音など、特定の聴覚刺激によって快感やリラックス効果を得る現象を意味していました。催眠オナニーとはいくつかの同一の技術用いられますが、直接的な自慰様相が存在しないため、R18に含まれずません。
近年では、同人声優の声を含む「音声作品」自体を指してASMRと呼ぶ用法も定着しつつあります。

ジャンルと内容: ASMRは、耳かきや散髪、ささやき声といった「日常行為の音響化」に注力した作品が多く見られます。特に全年齢向けの音声作品で多く見られ、「ささやき庵」シリーズのような耳かきや散髪、ささやき声を主体とした作品は根強い人気があります。
技術的背景: ASMRコンテンツは、立体的な音響効果を再現する「バイノーラル録音」(ダミーヘッドマイクを用いた録音技術)を多用します。これにより、あたかもその場に自分がいるかのような、非常にリアルで没入感のある音響体験が得られます。
市場と位置づけ
ASMRは、「催眠オナニー」などのアダルト音声コンテンツと共に、近年大きな盛り上がりを見せているジャンルです。
多くの成人向けコンテンツが男女で異なる内容を提供する中で、ASMRは男女共通で楽しめる数少ないコンテンツの一つであるとも指摘されています。
AI音声合成技術の発展もASMRに影響を与えており、YouTubeではAI合成音声によるASMR動画が多数再生されています。
ASMRは、聴覚に深く働きかけることで、聴取者の知覚や意識に変化をもたらし、リラックスや快感といった効果を促す表現手法と言えます。
ダミーヘッドによるバイノーラル録音

催眠音声の創作現場において、ダミーヘッドを活用した「右側の耳元と左側の耳元で別々の人物(キャラクター)が同時にささやく」コンテンツは、立体音響技術の特性を最大限に活かした定番の手法となっています。
- 「双子系催眠」としてのジャンル確立: ソースでは「双子系催眠」というジャンルが明記されており、ステレオ形式で二人の語り手が交互または同時に話しかける作品群として紹介されています。これにより情報量が増え、催眠効果が高まるとされています。音声作品販売サイトDLsiteのトップセールス作品にもこのジャンルが多く見られます。
- 「両耳同時処理」による非日常体験: 日常生活では、両耳で同時に全く異なる方向からささやかれることは非常に稀です。しかし、ダミーヘッド収録を用いることで、このような「両耳同時処理」が可能になり、日常では不可能な体験を音響化することができます。これは、耳かきコンテンツで両耳を同時に掃除するような、現実離れした状況を再現するのと同様の考え方です。
- 情報量の増大と意識の集中: 左右の耳から異なる情報が同時に提示されることで、聴取者の脳はより多くの情報を処理しようとし、結果的に意識が音響に深く集中します。これにより、催眠状態への導入が促され、より深いトランス状態へ誘導しやすくなります。
多様な演出の可能性: 同じ声優が左右で異なるセリフや異なるトーンで話すことで、二重の暗示効果を生み出すことができます。左右から言葉責めをするような作品も存在し、聴取者をより受け身のM(マゾヒスト)的な立場に誘導するのに効果的です。音声コンテンツは、聴取者が能動的に動くことができないメディアの特性上、M向けの作品が多い傾向にあり、女王様のようなSキャラクターが受け身のM視聴者に話しかける関係性が多くなります。


キャラクターの特徴や職業を全面提示したコンテンツ様々ありますが、コスチューム、体系、体位は基本的に説明しないとわかりません。よって、全体的に説明方になるのです。またアイドルネタのコンテンツは大量に創作されていますが、そもそもアイドルは多数Xアイドルという構図がないとアイドルのアイデンティティはなく、1X1ではただの彼女になってしまう問題があります。この「脳イキトリップ電波☆LIVE」はそのような問題解決した画期的なコンテンツで、基本的に声優たちは歌い続け、歌の歌詞でせめるという方法を使います。

第2章:催眠誘導の技法とフェーズ
催眠手法の二分化
催眠には大きく分けて二つの主要なアプローチがあります:
- 古典催眠:これは「あなたは段々眠くなる」のように直接的な暗示を用いる手法です。音声作品では、オープニングとエンディングに15〜20分程度の導入・解除パートとして組み込まれることがあります。
- 現代催眠:会話を通じて自然に催眠状態へ導く間接暗示を用いる手法です。音声作品では「眠くなーる」と直接言わずに眠くさせるような、この現代催眠的なアプローチが増加傾向にあります。落語の前座のような自然な導入を特徴とするものもあります。
自己催眠の訓練法
自己催眠の手法として「自律訓練法」があります。これは、手足の重みや温かさなどを心の中で順に唱え、身体的な変化を感じてリラックスする健康法です。催眠音声の導入部分で利用されることが多く、被暗示性を高める訓練としても有効とされています。
催眠音声の3つの必須フェーズ
催眠音声が成立するためには、以下の3つの必須フェーズがあります。
- 導入:催眠に入りやすくするための準備段階です。深呼吸や脱力などが含まれます。
- 深化:深いトランス状態へと誘導し、本題の性的内容へソフトランディングさせる段階です。このフェーズは技術的な難易度が高く、作品の質を左右するとされています。自覚することでより深く入ることができる「トランス/変性意識」の状態を目指します。
- 解除:プレイ後に催眠状態と暗示を解く段階です。不十分な作品もあるため、解除の確認が重要です。
暗示と感覚の強化技術
度強化は快楽に対する感度を催眠暗示によって強化する手法で、大人向け催眠音声においては必須とされています。局所的な感度強化から全身の感度強化まであり、リラックス状態と発情状態の相容れない性質を補うために重要です。また、皮膚感覚を高めます。
催眠オナニー作品におけるコンテンツは、利用者の「自慰行為が目的」であるため、聴いている人の性器が男性か女性かによって、コンテンツの内容や方向性が変わってきます。その主要な聴取層の性別と、それに合わせたキャラクターや演出によって大きく二分されています。近年では性別にとらわれないジェンダーニュートラルなコンテンツの可能性をまだまだ探る必要があります。
以下紹介の「催眠スクール~催眠にかかる為の催眠音声~」初心者をターゲットにっした催眠音声作品の定番です。、男女両用、全年齢向けで、複数のキャラクターから自分にあった先生を選び、催眠に関するレクチャーを丁寧に行うものです。全年齢向けということで、自慰行為はありません。

第3章:性別と志向性
基本的な内容の整理
男性向けコンテンツ:主に女性声優がキャラクターボイスを担当します。 女性向けコンテンツ:主に男性声優がキャラクターボイスを担当します。 ASMRコンテンツの例外:性別に関わらず広く受け入れられており、男女共通のコンテンツとして数少ない例です。
表現の幅と性別の課題
音声コンテンツは、その特性上、聴き手が能動的に関わることができないため、受け身の作品が多い傾向にあります。一方で、「オホ声」(抑えきれずに出る低音の喘ぎ声)や「わからせ」(生意気なキャラクターの立場反転)など、攻撃的な要素のあるジャンルも人気を集めています。
特殊なジャンル: 「メスイキ(女性高潮)」と呼ばれる男性向けコンテンツで、催眠誘導は一種の自己暗示のため、自分の身体をイメージできる範囲で様々に変容することができます。これを利用し男性が女性にトランスジェンダー、トランスボディーする体験を提供するジャンルが定番コンテンツとして存在します。これには大きく2通りあります。
- 男性器がついたまま女性に心(声)だけが変身するタイプ(女装)
- 体も心(声)も全て女性になるタイプがあります。
また、イメージの拡張はわずかなきっかけやフェティッシュを拡張することができ、別の生き物になったりが可能です。また「外部の声を排除」し、「自分の声だけがずっとある」「心の声だけが頭で響く」といった形式をとるものもメスイキの定番の形式です。多くの催眠オナニーコンテンツでは心の声が聞こえませんが、メスイキでは、官能小説のような手法で、細かな感情を自分の心として聞くことになります。のこのような形式は、聴取者の内面的な体験に深く焦点を当てるため、キャラクターの性別や特定の役割から離れ、よりユニバーサルな体験を提供する可能性を秘めていると言えるでしょう。
以下の作品は、女装趣味の少年が様々なシチュエーションでレイプされる内容になっています。特に、親友に自分の性癖をカミングアウトした所、逆にレイプされてしまうなど、視聴者がトラウマになりそうな内容が多く含まれています。

以下のコンテンツは女性にトランスボディーするだけでなく、妊娠したり、刻門から、口までを一本の管としてイメージすることで、アナルセックスが口まで貫通する表現があり、それを体験することが可能とされています。校門を緊張させる、喉を緊張させるといった緊張による触覚感覚と、それを連想連結させるようなイメージを強く持つことで、それらの体験をくっつけ、新しいボディーイメージつくるのがこれら変身系の催眠誘導の特養ですが、全く想像したことがないいイメージにも変身できるというところに、身体の不思議をただただ体感するものです。

表現の幅と性別の課題
音声コンテンツは、その特性上、聴き手が能動的に関わることができないため、M向けの作品が多い傾向にあります。一方で、「オホ声」(我慢できずに出る低音の喘ぎ声)や「わからせ」(生意気なキャラクターの立場反転)など、S要素のあるジャンルも人気を集めています。
キャラクターの表現においては、職業や性格を直接的なセリフで表現することが難しいため、環境音などを利用してキャラクターを表現する工夫が見られます。また、アイドルがステージで歌う内容で性的に刺激する、喘ぎ声のない作品なども存在します。
催眠オナニーコンテンツは、「セルフ絶頂」「ドライ絶頂」「ウェット」といった多様な絶頂体験を提供します。また、**「双子系」「音系」「変身系」「体験系」**など、ジャンルは多岐にわたり、聴き手を特定の状況や意識状態へと深く誘います。コンテンツの特性上、受け身のM向けが多い一方で、S要素も人気を博し、性別やキャラクター表現においても様々な工夫と挑戦が試みられています。
第4章:没入感を生む立体音響技術バイノーラルビートと瞑想
そもそも瞑想導入、トランス導入に使用されてきた宗教儀式の手法は近年科学的に研究されることで多くの技術がわかってきました。その一つにバイノーラルビートは存在します。ドラムや鈴、チャイムなどの楽器の音色や繰り返しのリズムにその法則があることが近年分かっており、これらを催眠技術に取り込んだものです。この背景から、日常的な瞑想時にリスニングするオーディオコンテンツとしても広く利用されています。
バイノーラルビート(Binaural Beats)は、聴覚の錯覚を利用した技術です。
- 仕組み:
- 左右の耳に、ごくわずかに周波数の異なる音(例:左耳に440Hz、右耳に444Hz)を同時に聞かせます。
- 脳は、この2つの異なる周波数を統合しようとする過程で、その周波数の差(この例では4Hz)に相当する「第3の音」を錯覚的に作り出します。
- この脳内で知覚される「ビート」こそが、バイノーラルビートです。
- 効果:
- この現象は、脳の周波数追従反応(Frequency-Following Effect)を引き起こし、脳の電気活動が外部刺激の周波数に同期しようとします。
- バイノーラルビートの周波数を特定の脳波(例:アルファ波、シータ波)に合わせることで、リラックスや深い瞑想状態など、特定の心理状態を作り出すことが期待されます。これは催眠状態に入りやすい環境を整えるのに役立ちます。
宗教的な儀式におけるトランス効果
バイノーラルビートや催眠が脳波に働きかけるのと同じように、古くから多くの宗教や文化の儀式では、特定の音やリズムを利用してトランス状態を誘導してきました。
- 繰り返しのリズム:
- 世界中のシャーマニズムや儀式では、ドラム、鈴(チャイム)、マラカスといった楽器が繰り返し使用されます。これらの楽器が刻む一定のリズムは、バイノーラルビートと同様に脳の周波数追従反応を引き起こすことが知られています。
- 一定の周波数を持つ繰り返し音を聞き続けることで、意識が通常の状態から逸脱し、瞑想的、あるいは変性意識状態(トランス)に入りやすくなります。
- 周波数の役割:
- 瞑想や祈祷に用いられる鈴やチャイムの音は、高周波の倍音を含んでおり、この音が聴覚神経を刺激し、精神を集中させたり、意識を特定の状態へ導いたりする効果があると信じられてきました。
- 現代のバイノーラルビートが意図的に特定の周波数を生成するのと同様に、伝統的な楽器もまた、その音色やリズムによって特定の精神状態を誘導する役割を担っていたと言えます。
バイノーラルビートが引き起こすドライオーガズム(Dry Orgasm)について
バイノーラルビートはドライオーガズムを引き起こすために重要な技術とされています。ドライオーガズムとは、射精を伴わないオーガズム(絶頂)のことです。これは特定の性的行為や心理的コントロールによって引き起こされる現象で、特に男性の間で関心を持たれています。
先にドライオーガズムかかわる絶頂についてまとめておきます。
絶頂の多様なアプローチ
催眠オナニーを含む音声作品では、様々な方法で快感や絶頂へと導きます。
- セルフ絶頂:ユーザーが手などで自己オナニーを行い、射精でフィニッシュするオーソドックスなスタイルです。暗示によって感度を上げたり、手の感覚を変化させたりすることで、通常のオナニーとは異なる体験を提供します。
- ドライ絶頂(ドライオーガズム):陰茎に触れずに、催眠のみでオーガズムに達する、催眠音声特有のマニアックな絶頂です。射精を伴わないため、連続してオーガズムを得られる可能性があり、非常に強い快感をもたらすとされています。陰茎だけでなく、乳首や脳、全身に快楽を収束させるなど、多様な形式が存在します。
- ウェット:陰茎に触れずにノーハンドでの射精を目指す絶頂です。ドライオーガズムとは異なり射精を伴いますが、実現の難易度が非常に高いとされています。
そのうえでバイノーラルビートが引き起こすドライオーガズムはいかが考えられます。
仕組み
- 性的興奮によってオーガズムの感覚は得られるものの、精液の射出がない状態を指します。
- これは物理的な刺激だけでなく、心理的な集中や特定の呼吸法、そして骨盤底筋群のコントロールと深く関連しています。
- 練習によって、射精の直前に骨盤底筋を締め付けることで、精液が逆流する、あるいは射精筋が精液を押し出す力をコントロールできるようになると言われています。
効果
- 射精がないため、肉体的な疲労感が少なく、オーガズムの感覚を複数回、あるいはより長く持続させることができるとされています。
- 「肉体的な解放」だけでなく、「純粋な快感」に焦点を当てることで、より深い精神的な満足感を得ることを目的とします。

“バイノーラルビートによるドライオーガズム誘発音 vol1”

第5章:市場戦略とクリエイターエコノミー
ショート動画と「催眠オナニー」の収益性
現代はTikTokやYouTube Shortsのような「ショート動画」が主流ですが、この市場が飽和状態にある中で、「催眠オナニー」というニッチなジャンルが着実に、そして安定的に収益を伸ばしていることは注目に値します。ショート動画が瞬発的な面白さや手軽な情報消費を目的とするのに対し、催眠オナニーは以下のような点で差別化されています。
- 高付加価値コンテンツとしての差別化:
- 専門性と技術力:ダミーヘッド収録による高音質な立体音響、繊細な音響設計、声優の演技力といった、手軽には模倣できない専門的な知識と技術、高品質な機材が必要です。この「参入障壁の高さ」が希少性を高めています。
- 体験型コンテンツとしての価値:単なる視聴ではなく、ヘッドホンを装着して没入することで得られる**「体験そのもの」に価値**があります。聴覚に深く働きかけ、意識や身体感覚に影響を与えるため、ユーザーは高い対価を支払う傾向があります。
- 独自の収益モデルの確立:
- コンテンツ販売が主軸:完成された音源のダウンロード販売や、定額制サブスクリプションが主な収益源です。ユーザーが直接コンテンツの価値に対価を支払うため、クリエイターはより確実に収益を得られます。
- 継続的な需要とリピーター:一度良い体験をしたユーザーは、新作や他の作品にも興味を持ち、リピーターとなる可能性が高く、これが安定的な収益に繋がっています。
- ニッチ市場での優位性:大衆向けの市場とは異なり、特定のニーズを持つニッチな市場であるため、高品質なコンテンツを提供できるクリエイターは優位な地位を確立しやすいです。
- プライベートで没入的な体験への需要:情報過多な現代において、他者と繋がっている状況から離れ、深く自己と向き合う、あるいは個人的な快楽を追求する時間への需要が高まっています。催眠オナニーは、この**「自分だけの時間」への投資ニーズ**に合致しています。
過熱するマーケティング戦略
年々作品数が増加し商業化が進む中で、マーケティング競争も過熱しています。
- サムネイル戦略:音声作品は聴いてもらうことが重要ですが、ユーザーにデモ音声を聴いてもらうのは困難なため、サムネイル画像が大きな役割を担います。プロのイラストレーターやデザイナーによる高品質なイラストやタイトルロゴが用いられることが多く、AI生成画像も利用されています。
- フォーリーサウンド:高品質な音はマーケティングのセールスポイントです。非圧縮のWAVファイルでの配信が標準的で、数ギガバイトに及ぶこともあります。映画用語で後から効果音を作成・被せて背景音をリアルにする「フォーリーサウンド」に注力した作品が知られており、「リズムに合わせて頭を左右に振りながら聴くことで、より立体的に聴ける」といった斬新な作品も登場しています。
- ランキングパック:DLsiteの人気ランキング上位に入るために、発売時に100円程度の超低価格で販売し、ダウンロード数を一時的にブーストする「100円商法」と呼ばれる戦略が多く用いられています。
- THE FIRST TAKEオマージュ:一発録りのパフォーマンスを模した「THE FIRST TRACK」シリーズのように、実録風の作品や、サムネイルデザインを模倣した作品も流行しています。
- 実録風作品:「ガチ実演」「リアル人体実験」といった実録風の作風で、高価格にもかかわらずヒットを飛ばす作品もあります。
- 全年齢作品からの誘導:全年齢版とアダルト版を同一キャラクターで展開し、「全年齢版の配信者が配信を切り忘れたのがアダルト版」といった関係性を暗示することで、アダルト版へのフックとする例も存在します。
制作のプロセスと「声優買い」文化
音声作品の鑑賞は2時間近く同じ声を聴くことが多いため、ユーザーは制作サークルやシナリオよりも好みの声や演技の声優かどうかで新作を購入する傾向があり、「声優買い」の消費文化が見受けられます。
制作では、フリーの同人声優に収録を依頼するのが一般的で、一部の声優に人気が集中しています。同人声優はセルフプロデュースにも意欲的で、制作方法や売り方を指南するサイトを運営する人もいます。
レビュー文化
DLsiteでは多くのレビューが掲載されていますが、ポイント配布の仕組みや否定的なレビューが掲載されない傾向から、販売ページ上の評価はあまり参考にならないのが現状です。一方で、「同人音声の部屋」のような個人ブログが信頼できる情報源となっており、近年ではディスクガイド的な評論誌も登場しています。
第6章:芸術表現としての可能性と未来
VR/メタバースとの融合
バイノーラル録音技術を核とする催眠オナニーは、VR(仮想現実)やメタバースといった次世代のデジタル空間における新たな芸術表現と深く結びつく可能性を秘めています。
- リアルな空間再現と没入感の最大化:VR技術は視覚情報だけでなく、聴覚情報と触覚情報を組み合わせることで高い没入感を提供します。バイノーラル録音は、音源の方向、距離、高さ、空間の響きを正確に再現し、視覚と聴覚が完全に同期することで、ユーザーはあたかもその仮想空間に本当に存在しているかのような感覚(プレゼンス)を覚えます。
- インタラクティブな音響体験:メタバースのような多人数参加型の仮想空間では、ユーザーの行動や位置によって音響がリアルタイムに変化するインタラクティブな音響体験が不可欠です。これにより、聴覚が単なる情報伝達手段ではなく、身体性と空間性を結びつける感覚の媒体としての役割を強化し、「身体的プレゼンス」を高める芸術表現が可能になります。
「意識の変容」をテーマにした芸術
催眠オナニーが培った、音響による心理操作のノウハウは、VR/メタバースにおける多岐にわたる「意識の変容」をテーマとする芸術の強力なツールとなり得ます。
- 例えば、ユーザーを深い瞑想状態へと誘う「意識の調律」インスタレーション。
- 感情や記憶を呼び覚ますような「心理的風景」の音響体験。
- 知覚の歪みや拡張を伴う「非日常的現実」パフォーマンス。
- 個人の内面に深く作用する「聴覚の展示会」や、共通のバイノーラル音源を介して同時に深いトランス状態を共有する「共有されたトランス」パフォーマンスといった、メタバースならではの新たな舞台芸術が生まれる可能性を秘めています。
「聴くこと」の再定義
催眠オナニーが示唆するのは、音を単なる情報や娯楽として消費するだけでなく、「聴くこと」そのものが深遠な体験や変容をもたらしうる行為であるという認識です。これは、人間の知覚や意識の可塑性を探求する新たなサウンドアートの領域を開く試みであり、「聴覚の芸術」のフロンティアを開拓する可能性を秘めています。
歴史的視点からの示唆
1900年頃のパリでは、風俗業が栄え、トゥールーズ=ロートレックやエドガー・ドガといった多くの芸術家がその世界を題材に作品を制作しました。彼らは社会規範の境界から、人間の生々しい感情や欲望を描き出し、数々の傑作を生み出しました。
同様に、今日の「催眠オナニー」も、社会的には「アダルトコンテンツ」という特定のカテゴリーに属しますが、その内包する技術や表現の可能性は、既存の芸術概念を揺さぶる力を持っているかもしれません。これは、人間の根源的な欲求に音響という新たなアプローチで応え、現代のサウンドアーティストが新たな表現のヒントを見出すことができる可能性を示唆しています。
今後の展望
音声読み上げや声質変換といったAIの発展は、音声作品業界に大きな影響を与える可能性があります。現時点ではまだ高品質な音声を生成するには時間がかかりますが、確実に近づいている脅威であるとされています。一方で、バイノーラル録音自体は確立した技術ですが、「頭を振りながら聴くことでより立体的に感じられる作品」のような斬新なアイデアが登場し続ける可能性も期待されています。第6章のまとめ: 催眠音声の技術は、VRやメタバースにおける「意識の変容」をテーマとした新たな芸術表現、例えば「意識の調律」や「共有されたトランス」といった体験型アートへと進化する可能性を秘めています。これは、聴覚と意識の関係性を問い直す「聴覚の芸術」として、「聴くこと」そのものを再定義する試みとなり得ます。歴史が示すように、境界領域にある現象から革新的な芸術が生まれることがあり、今後の技術発展と合わせて、この分野の芸術的成果に期待が寄せられています。
[参考資料]
編集: 安田理央, 稀見理都(2024)“アダルトメディア年鑑2024 AIと規制に揺れる性の大変動レポート”
同人コンテンツ販売サイトdlsiteがサイニー販売では代表的。dlsiteまとめに多くの情報がまとまっている。試し聴きもdlsiteでできる。
“催眠オナニー検定が始まりました”
https://ch.dlsite.com/matome/10942
サイニー研究会(2010)“さあ、やってみよう~催眠オナニー入門~(CD付)”