前回は、野口三千三の「原初音韻論遊び」として、声帯を振動させて出す音”a, e, i, o, u”について説明し、”h”と”n”について考察し、”n”の重要性について言及しました。今回は、”a, e, i, o, u”などの一般的な発音に必要な口腔の形を考えたうえで、言葉とそのニュアンスが共通感覚(コモンセンス)として立ち上がっていくかについて考察します。
発音とニュアンス
舌の位置が前後方、上下に動かすかいてみる。腔空間を大きくして出す音、小さくして出す音、横に広げて出す音などによって、AからOまでの様々な音が作れる。
これらの動きは、明確にここからここという区切りがあるわけではなく、グラデーションでつながっています。また、唇を動かし振動させたり、喉を鳴らしたり、色々な動きをしていると、日本語にはないものの、喉を鳴らしたり舌を鳴らしたりという音が加わることがあります。これが、発音のすべてと言えます。
優れた歌手とみんなの発音
優れた歌手たちは、喉の奥の力の調節に長けています。発音という点では、プロとアマチュアの境目はほぼありません。もちろん、神経の病気だったリ、外国の別の発音体系の人には苦手な音があるでしょうが、バイオリンや尺八のような、沢山の練習が必要な楽器に比べると、おおよその人はでき、この音作りの原理は、日本語に限らず、すべての言語で共通しています。
これは容易に発音でき、皆が同様に使えるから言語として使われているのです。
音の高さ低さ
野口三千三が述べていた「原初音韻論遊び」ではお発音から受ける印象をが述べられていましたが、これはみなが発音したときに共通に感じる感覚があるということです。
共通な感覚として、音の高さ低さが上げられます。音の周波数によって決まります。周波数の波が広ければ低い音、周波数の波が細ければ高いい音になります。しかし、音の周波数は、波の広さのはなしで物理的な高い低いという性質ではありません。なぜ人間は、周波数細かいと高い音、周波数広いと低い音と感じるのでしょうか?
その理由は、まだ完全には解明されていないようですが、高い音は喉を細く頭に近いところで音を出すのに対して、低い音はのどを広くし首より下から音を出します。高い音は緊張、低い音は脱力の性質がありこれも高い低いと感じる要因として関係がありそうです。
声の調子で緊張をとらえる
声でその人の調子や嘘をついていることが分かるなど、喜怒哀楽といった感情が声の調子に情報がのっています。単純に考えても、人の緊張状態を判断することができます。緊張していると、声が震えたり、声量が小さくなったり、息が詰まったり、抑揚がなくなったりします。
日本のオノマトペでは、力が抜けている場合は、「へろへろ」「フラフラ」などのは行。力尽き重さを表現する場合は「ぐったり」「がっかり」のが行です。
“sh”や”th”の空気が素早く抜ける音は、スピード感を感じるものです。例えば、風が吹く音、車が走る音などです。これらの音は、空気が素早く振動することで生じるホワイトノイズに由来します。そのため、ホワイトノイズはスピード感を感じると考えられます。日本語のオノマトペでは「スー」「シー」「ツー」などさ行です。
その逆に、”v”のば行の「ベトベト」次に”n”のな行「ねとねと」”p”のぱ行「ペトペト」などは根がり毛があり水分を含んだ重い印象となります。これはオノマトペマトリクス的に対局の質感を表しています。
音と動きの共感覚
音と動きは、密接な関係にあります。例えば、高い音は、軽快で動きやすいイメージを、低い音は、重々しくて動きにくいイメージを呼び起こします。また、音の強さや音色なども、動きの印象に影響を与えます。
このように、音と動きは、人間の共感覚によって結びつき心的イメージとしてとらえています。共感覚とは、ある感覚が別の感覚を引き起こす現象で、心的イメージは心の中で思い描くイメージのことです。例えば、色を見ると、特定の味や匂いを感じることがあります。
動くという言葉の語源は虫が「うごうごと動く」という擬態語が期限です。「うごうご」という動きは本来は音がしない動きを表しています。しかし、人間は、音と動きを共感覚によって結びつけているため、この擬態語を聞いて、動きのイメージを抱くことができます。
音と動きの共感覚は、人間の創造性にも影響を与えています。例えば、音楽は、音と動きの共感覚によって、聴く人にさまざまなイメージや感情を喚起します。また、ダンスや演劇などのパフォーマンスも、音と動きの共感覚によって、観客に臨場感や没入感を与えます。
音を使った遊び
音を使った遊びは、音と動きの共感覚を体験する良い機会です。音と動きは、人間の心的イメージと共感覚によって結びついています。ジェスチャーやハンドサインは文化的な記号が多く含まれていますが、同時に聞こえない音の表現や、心的イメージや、喜怒哀楽を表現する動きも含まれています。音から感じる素直な感覚として受け止めるために、まず自分の発音に注目し、自分の中の新しい感覚を探してみましょう。
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